日本の漫画界の土台を築き上げた、偉大な存在…誰にも出来ないことをやってのけた手塚治虫氏!
また日本で最初にテレビ長編アニメを手がけたのも手塚治虫氏でした…その第一歩は、クールジャパンの原点でもありました。
命の意味を見つめ続けた手塚治虫氏、700タイトルを越える作品でどのようなメッセージを伝えようとしたのか?
その答えを求めて、行ってまいりましたぁ!
山本芳樹 曽世海司 松本慎也 藤原啓児からなる「アドルフに告ぐ」出演者tripチーム!!
時は4月10日、雨がシトシト金曜日!
やってまいりました、兵庫県宝塚市は宝塚歌劇団すみれ寮のとなり…火の鳥のモニュメントが誘う記念館は、まるで宇宙から命を見つめているのだよと言わんばかりの風格がありました。
すみれ寮のゴージャスさで度肝を抜かれた4人は(笑)、その危いテンションのまま火の鳥に誘われて館内へ…オーッ、「アトム」だ!「リボンの騎士」だ!「不思議なメルモちゃん」だ!「ブラック・ジャック」だぁ!感嘆詞感嘆詞感嘆詞!!
見学を忘れて記念撮影の嵐…老いも若きも時間を忘れて幼児退行、土煙をあげて館内を走り回る4人には目的の欠片も感じられない有様でした。
「記念館には閉館時間が有る!!」
少し冷静な若者の一声で、4人は漸く自分を取り戻しました。
落ち着いて周りを見渡すと…其処には治虫氏が少年時代に興じた、昆虫採取の道具や標本と共に、実に細やかで精密な記録ノートが展示されていました。
そこからは、治虫氏の命を見つめ空想と向き合う原点と言うべき、少年時代の喜びが満ち溢れていました。
大好きな昆虫オサムシから、ペンネーム治虫をつけました。
自分を取り戻し出した4人は、暫く釘付けになり、改めて記念館にお邪魔出来て良かったと確信しました。
本当、一見の価値有りですよ!!
「記念館には閉館時間が有る!!」
4人は釘付けになっていた足を引きづり乍ら、戦時中に過ごした学生時代には漫画の世界に逃げ込むことで生きのびることが出来た治虫氏を通過し、大阪大学医学部に入学した時代へと辿り着きました。
戦争地獄体験から思い知る命の儚さと尊さ…未来など描けない絶望的な状況で徴兵を逃れる為に医大へ入学、そして終戦。
「生き残れたことに感謝、何に感謝していいか分からないくらい嬉しかった…これからはとことん生きて自分の好きなことをやると決心した瞬間だった。」…迷いなき一直線!!
「天はある者を見込んで、その才を試そうとするとき、先ず試練を与える」…と言いますが、治虫氏は正に天から見込まれた方なのだと4人は痛感しました。
私達の頭の中は…閉館時間への危機感など消え失せ、途轍もない器を持った漫画家の原作に携わることが出来ることの、喜びと不安で放心状態になっていました。
「それでも閉館時間はやってくる!」
ガリレオ ガリレイ気取りのメンバーの一声に、チームはイラつきながらも最終目的地である「アドルフに告ぐ展」会場へと向かいました。
そこは赤と黒の世界でした…単純な私は炎と煙を連想し、会場入口から出迎えてくれた登場人物達が、炎と煙に翻弄された人生を送ったというリアリティーに嵌り込んで行きました。
壁に掛けられた沢山の絵からは、視覚のみならず、五感全体に訴えてくる命の叫びが感じられ程でした。
世界中で翻訳され…戦後の語りべとして、今もなお光輝き続けている漫画界の金字塔!
「善と悪は行ったり来たりする、一方的な正義はあり得ない…境界線無き世界」
そんな会場の一角に、原作者から作品へのコメントが掲げられていました。
それは、治虫氏が体調不良の為に休載を余儀なくされ…唯一ケリがつけられた2人のアドルフの対決以外の、描き切れなかった様々な人物達と作品へのレクイエムでした。
というか、僕にはレクイエムに思えました。
治虫氏が言うように、2人のアドルフ以外の登場人物達の物語にケリが付いていれば…ウルトラ大河ドラマですよね。
是非読んでみたかったし、峠草平に小説「アドルフに告ぐ」を書いて欲しかった!
治虫氏の無念な思いが、ヒシヒシと伝わって来るものでした!!
話は少し逸れますが…「アドルフに告ぐ」再演舞台化に際して、演出倉田が提案した企画があります。
それは日本編・ドイツ編・特別編の3つの視点で、「アドルフに告ぐ」の物語世界を捉え表現しようというものです。
今回の倉田演出の企画は…今ある原作により忠実に寄り添うことで、原作者がケリをつけられなかった膨大な物語世界への、せめてもの供養になるのではないかと思ってしまうのです。
私如きが、穿った妄想で申し訳ありません!
でもそれくらいの心意気で、再演に望みたい!望まなければならないと思いました!!
「ウォーッ!!いよいよ閉館時間がぁ~っ!」
たたた大変だぁ!冒頭に掲げた、手塚治虫氏の作品に込められたメッセージとはぁ??
なんて焦ったフリはやめて、じっくり楽しみながら寄り添って行きたくなりました。
「ジャングル大帝」から読み直し…あっ、「アドルフに告ぐ」からにします!
最後までお付き合い頂きました皆様、誠に有難うございました…長くて御免なさいでした。
もしお時間のご都合がつくようでしたら、是非「手塚治虫記念館」を訪れてみて下さい。
そして戦後70年の夏は…劇団スタジオライフ公演・手塚治虫原作「アドルフに告ぐ」紀伊國屋ホール、大阪シアター・ドラマシティ於を、何卒宜しくお願いいたします。
手塚プロダクションの皆さん、手塚治虫記念館の皆さん、温かいご協力を頂きまして誠に有難うございました。
あ~っ楽しかったぁ!!
藤原啓児
宝塚市立手塚治虫記念館 開催中企画展
戦後70年に考える「アドルフに告ぐ~僕は戦争の語り部になりたい~」展
2015年6月29日(月)まで 毎週水曜休館(祝日と重なる場合は開館)
http://tezukaosamu.net/jp/museum/index.html