大雪は溶けたとはいえ、まだ春は遠く寒気の厳しかった2月19日、Studio Lifeの役者さんたちとスタッフの方々は、深夜0時に集合して、山あいの湖に向かって車を走らせたのです。『死の泉』のポスターやパンフレット用の写真を撮るためでした。
朝靄のたちこめる湖畔で、雰囲気のすばらしい写真が撮れたと、スタッフの方から後でうかがいました。東京にいてさえ凍りつく寒さです。私は感動したのでした。
舞台をより完全なものにするために、全力をつくすというStudio Lifeのポリシーを、いつも感じています。
1999年の4月、『トーマの心臓』の再演を見たのが、Studio Lifeというユニークな劇団を知った最初でした。原作がそのまま動き出したような心に迫る舞台でした。役者さんたちは役柄にぴったりで、しかも、外見の美しさだけに頼らず、役の内面を誠実に表現されているのに魅力をおぼえました。舞台装置も音楽の選曲もみごとでした。
先に、脚本・演出の倉田淳さんから、たいそう丁寧な、そして熱意のこもったお手紙をいただいていました。『死の泉』を舞台化したいという趣旨でした。最初は、無理ではないかと思いました。原作は、長い複雑な話で、しかも、ボーイソプラノ、カウンターテナーという、特殊な歌手を必要とします。その上、少年が主人公です。お誘いを受けて『トーマ』を観劇し、不安は解消しました。この劇団、この演出、この役者さんたちなら、きっと、『死の泉』もよい舞台に仕上げてくださるだろうと思いました。
初演の舞台は、私の予想をはるかに超えるすばらしさでした。この劇団に舞台化していただいたのは、作品にとって幸せなことでした。
その後、Studio Lifeは幾つもの舞台を重ね成長してきました。去年の暮れから今年にかけての『トーマの心臓』『訪問者』の連鎖公演でさらに華麗に開花し、観客に深い感動を与えたStudio Lifeに、『死の泉』を再演していただけるのを喜んでいます。
|